early in the rainy day

ほんの備忘録として。自分のために書いてみます。

東京物語

東京物語』 
小津安二郎/1953/日本

初めての小津映画。嫁姑の関係とか、年寄りが疎まれるところとか、今と変わらないなあと思ったり、女性の立ち位置とか、“余所様”との距離感とか、変わったなあと思ったり。そうやって観ることが出来るだけでも、価値がある映画なんだと思う。この時代にこれだけ日本人の精神性を具現し得た小津安二郎というひとが居たことに感謝しなければならない。

いくつか考えたこと。
尾道から出て来たはずの両親が、山の手弁風の言葉を話していること。“東京“がアイコンであるばかりでなく、この物語を成立せしめる前提条件として強く滲み出ている。
・東京と広島で起きていることが同時に観られるという経験自体、この時代には稀有なものだったのかも知れない。今となっては感じることすら出来ない映画らしさ。
・『だれも知らない建築のはなし』で、日本人が無口であることで神秘的になっている旨の発言があった。もちろんこれは皮肉だろうが、本音と建て前を分ける日本人の美徳は捨てたものではないかもしれない。

これだけのカット数を撮ることがどれだけ大変だったのかを考えると、同時の苦労が偲ばれる。“小津カット“と言われる独特なカット割も、様々な都合でやむを得ずそうなったものも少なくないのではなかろうか。